「犯人はヤス」

「人間は何かをネタばれして生きているといってもいい生物だ。その中でおまえのネタばれはこの世のどんなことよりもやさしい」という台詞を思いついたのですが、いかんせん使う場面が全く見当たらないので困っている今日この頃皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。思いついた瞬間の最大瞬間風速は結構あったんだけどな。

という前置きをしましてそろそろ、そもそも人類の八番目の大罪と言っても過言ではないネタばれについて本気出して考えてみますとしましょうか、しませんか、しましょうね。

「ネタばれ」という言葉について考えてみますと、「ネタ」と「ばらす」の二つに分解されます。この二つの概念さえ十全に把握すれば世は事もなし。ネタばれマスターといっても過言ではありません。二つの言葉の意味については各自辞書(ディクショナリー)をひくように、で終わってしまうと元も子もないので続けてみましょうか。

昔の偉い人は言いました。「考えるだけで思いが伝わる関係の間では思い浮かべただけでもネタばれになるのよ」と。まあそれはもちろんそうなんですけど、現実はより厳しい。例えば、「○○が面白かった(面白くなかった)」これは場合によっては完全にネタばれになり得ますね。考えても見てくださいここに犯人が女子高生のミステリーしか愛せない男が居たとしましょう。彼は女子高生が大好きで大好きで、だけれどもその大好きな女子高生が殺人を犯すというシチュエーションのみをこよなく愛すという歪んだ愛情を持っています。思い起こせば彼が何故そのような感情を抱くようになったのかそれには、深い事情、聞くも喜劇、語るも悲劇という空前絶後、抱腹絶倒、波瀾万丈の物語がありまして、そうあれは彼が生まれる10日と3時間、まあそれはいいや。話がそれまみたが、彼が面白いという場合、すなわちそれは犯人を指し示す事に他ならない。まあ、ここまで極端な場合ではなくとも発信者の嗜好情報を持っていた場合、作品の評価はたとえ感想レベルではあってもネタばれになり得ますわな。

厳密に申し上げれば、ジャンル分けこれすらもネタばれに他なりません。ミステリーの棚に「アクロイド殺し」がおいてあるこの世界は、無垢な心で当該書物を読む読者のこの世から抹消しています。ほんとどうかと思うよ。


さてここで古典ミステリーにならい諸君らに問う。作者からの挑戦ってやつですね。ここまで書いてきた文章。文字数にして1030文字。ここに一体何個のネタばれがあったでしょうか。答えを語る事はネタばれになるので、それについては述べません。語り得ぬものについては沈黙するしかないのだよ。

PS。ネタばれってか殆どパロディーですよすいませんね。